|
今日のお金の方が価値がある |
|
|
「今日の1円は明日の1円よりも価値がある」
この言葉は収益還元法を理解する上で、非常に役に立ちます。
理解を深めるために、読者の皆さんに質問しましょう。 「今日10万円もらえるのと、来年の今日10万円もらえるのと、どちらを選びますか」10人に聞けば10人とも、今日の10万円を選びますよね。これはなぜでしょう。相手の気持ちが変わって、来年になるともらえないかもしれないと思う人もいます。これは、1つの時間的リスクですよね。また、今日10万円もらって、それを1年間貯金すれば来年の今日には10万円以上になっている、と思う人もいると思います。これはお金を増やす機会を失うということです。そして何より今の10万円は使うことが出来るけど、来年の10万円は今使えないということです。つまり来年の10万円は今の10万円よりも価値が低いということです。
ではもう1つ質問をしましょう。
「今日10万円もらうのと来年の今日11万円もらうのと、どちらを選びますか」
さっきの質問に即座に今日もらいますと答えた人も、この質問にはちょっと考えてしまうのではないでしょうか。今すぐ使うお金が必要な人は今日の10万円を選びますが、すぐにお金が必要でない人は考えてしまいますよね。1年で10%以上お金を増やす方法を知っている人は今のお金を選びますが、そうでない人は来年もらえないリスクと天秤にかけて選択するでしょう。このようにお金の価値は普遍ではないのです。時間とともに変化しますし、個人の置かれた状況によっても変化します。
ものの価値が不変でない例えとして、中国人の投資家に教わった言葉があります。
「昼食前のラーメンは昼食後のラーメンよりもはるかに価値がある」お金についても同じことが言えるのです。さらに一つ質問しましょう。 「金を1s買ったとします。あなたはその金に何を期待しますか」この質問への答えは皆さん同じだと思います。金が値上がりすることを期待しますよね。人はプラスになることを期待して投資をします。つまり、「お金は何らかの形で増える」ことが前提条件なのです。実際に殆どリスクを負わなくても、お金を増やす方法はありますよね、定期貯金・国債などがそうです。リスクが少ないから、当然リターンも少ないですけど。
今まで話したことをまとめると
「将来の金よりも、現在のお金の方が価値がある」
「将来のお金と現在のお金の価値の差は、人によって違ってくる」
ということです。これが収益還元法の前提条件となっています。
収益還元法では将来もらえるお金を割り引きます。その割引率のことを期待利回りといいます。この期待利回りは個人によって違ってきます。例えば、100万円を年利3%で借りて投資をしたとします。この人にとって投資した100万円は1年後に103万円になっていないと意味がありませんよね。この人の期待利回りは3%以上ということになります。つまり、期待利回りは個人が必要な最低利回りということです。
期待利回りは複利の利回りです。一般的に不動産評価に使う単年度の利回りと違うことに注意してください。
例えば1000万円でワンルームマンションを投資目的で購入したとします。5年後に売却して投資を完結させます。毎年100万円の収益が上がり、5年後に同じ1000万円で売れたとします。この投資の複利利回りは10%です。確認してみましょう。期待利回りが10%として、各年度の収益を割り引いてみます。
|
投資額 : 1000万円 |
|
1年目収益 |
100万円 ÷ 1.1 = 91万円 |
|
2年目収益 |
100万円 ÷ 1.1 ÷ 1.1 = 82万円 |
|
3年目収益 |
100万円 ÷ 1.1 ÷ 1.1 ÷ 1.1 = 75万円 |
|
4年目収益 |
100万円 ÷ 1.1 ÷ 1.1 ÷ 1.1 ÷ 1.1 = 68万円 |
|
5年目収益 |
1100万円 ÷ 1.1 ÷ 1.1 ÷ 1.1 ÷ 1.1 = 583万円 |
これが各年度の収益を10%で割り引いた現在の価値です。1年目から5年目までを合計すると1000万円になります。投資額と割り引いた現在価値が等しくなるとき、その期待利回りが投資の複利利回りです。これを専門用語でIRR(内部収益率)といいます。
こんな難しい計算しなくても、1000万円の投資で毎年100万円収益上がるんだから、利回りは10%、暗算でも計算できる。という人もいるでしょう。でも、ちょっと待ってください。5年後に900万円でしか売れなかったらどうでしょう。この場合複利利回りIRRは8.31%です。投資信託などの投資と比較するときはこのIRRで比較するのです。表面利回りでは比較できません。このIRRの計算は金融電卓で簡単に計算できますが、残念ながら日本には使い勝手の良い金融電卓はありません。米国ではHP社の金融電卓10BUが一般的に使われています。これは日本では一般に販売していません。IREM JAPANでは日本語の解説書付きで販売しており、年に何回か金融電卓セミナーを開催しています。是非ご参加ください。
|