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表面利回りの限界 |
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よく土地の有効活用という言葉を聞きます。土地の有効活用という名のもとで行われる提案には初期投資の中に土地に値段が入っていないのが一般的です。なぜなら、利回りが極端に低くなってしまうからです。これが従来から使われている表面利回りの限界です。一般の投資の世界で通用しない数字で評価するので、数字の大きさだけしか説得する材料が無いからです。投資をすべきかどうかを判断するとき、可能である全てを考慮しなければいけません。当然、持っている土地を売って、他の投資の資金とすることも考慮すべきです。以下、当社がプロデュースしている実際の案件を基に説明していきたいと思います。
当社が手がけているもので、老人向け小規模多機能施設の建設・運営案件があります。非常に単純な例なので、これを基に説明したいと思います。
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土地評価額 |
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7000万円 |
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建築費 |
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6000万円 |
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収入 |
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700万円(建物維持管理費は運営会社負担、20年定額) |
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ローン |
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建築費全額借入 2.95% 20年 |
問題を単純化するために、税金・手数料は無視します。
土地を考慮しないで考えると、利回りはどのようになるでしょうか?建築費は全額ローンでまかないますから自己資金はゼロです。
表面利回りは 700万円÷6000万円=11.7%
ネットの利回りはどうなるでしょう。この場合、建物維持管理費は運営会社負担で一切かからないので、あと出て行くものは負債の支払いだけです。年間の負債支払額合計はおよそ398万円です。
従ってネット利回りは (700万円−398万円)÷6000万円=5.0%
ということになります。でもこの2つの計算をよく考えてください。6000万円は借りた額であって投資額ではありません。また、物件の価値も表していませんよね。従って金融商品の利回りとは比べることが出来ません。はっきり言って意味のない数字です。
収益還元法での評価でも単年度の評価指標があります。
FCRという物件価格に対する収益率と、ConCという自己資金に対する収益率です。
この場合、物件価格は、建設費+土地評価額、自己資金は土地評価額になります。
FCR=700万円÷13000万円=5.4%
ConC=(700万円−398万円)÷7000万円=4.3%
FCRは物件の収益力を示しており、ConCは投資家の収益率を示しています。
次に、複利利回りの評価を行います。収益還元法で考えると、この場合の投下資本額は土地評価額の7000万円です。毎年のリターンは実際に投資家の手元にくるキャッシュフロー700万円−398万円=302万円です。5年後に売却します。このときローンも一括返済します。このように、最終年度で投資に関わる全てを精算するのです。5年後の一括返済額は4813万円です。5年後の売却価格は12500万円とします。模式的に書くと以下のようになります。
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年 |
CF(キャッシュフロー) |
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初期投資 |
−7000万円 |
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1年目CF |
302万円 |
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2年目CF |
302万円 |
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3年目CF |
302万円 |
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4年目CF |
302万円 |
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5年目CF |
302万円+12500万円(売却価格)―4813万円(ローン返済) |
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=7989万円 |
この投資の複利利回りIRRは6.1%となります。なぜこのような計算を行うのかについては、紙面の都合上割愛させて頂きます。興味のある方は IREM JAPAN の研修を受けて頂ければ詳細に理解することが出来ます。
ここで始めて、他の投資と比較できる数字が出てきました。今回の投資は20年間の借り上げ保証が付いており、内容も小規模多機能施設なので比較的安全性が高い投資と考えられます。ですから、比較対象も比較的安全性が高いものを選びます。当社は投資信託の販売も行っていますので、投資信託と比較してみましょう。投資信託には、カントリーリスク・為替リスク等を低減するために、世界中の債権・ファンドに投資する、いわゆるグローバルファンドというものがあります。この商品は長期保有すると比較的安全性が高いといわれています。不動産投資と比較するには良い商品です。その中でも最も安全性の高い商品は全額債権に投資するものです。国内債券50%国外債権50%の商品の5年保有の過去20年間の実績の複利利回りは平均5.8%(最大10.8%、最低1.8%)
この商品と比較すると、今回の投資は安全性の面でファンド投資よりもすぐれているので、良い投資であると考えられます。
このように、収益還元法評価をすることによって、金融商品を含めた大きな投資の世界の中で評価が出来るようになります。これからは投資の時代です。不動産投資が他の金融商品と違う聖域であった時代は終わりました。是非皆さんこれを機会に収益還元法の勉強をして頂きたいと思います。収益還元法について、もっと知識が欲しい方は、繰り返しになりますが、 IREM JAPAN の研修にご参加ください。
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